NICT「データ連携・利活用による地域課題解決のための実証型研究開発」
スマート自転車とオープンデータを活用した道路インフラ維持システム
実施機関: 早稲田大学
研究開発期間:2018年度~2020年度
- 研究開発の目的
近年、世界中で、インフラの老朽化や自然災害に対する危機感が高まっている。そこで本研究開発課題では、スマート自転車を用いた道路インフラ維持管理システムのプロトタイプ作成を試みる。最終的には実証実験を実施し、本研究開発課題の有効性を示すとともに、自動車による道路インフラ維持システムとの統合を目指す。
- 研究開発の概要
(1) スマート自転車の開発
電動アシスト自転車はバッテリとモーターを装備し、モーター駆動によって人力を補助する自転車であり、自転車市場の停滞が指摘される一方で、2025年には自転車販売台数の1割を占めると見込まれている。電動アシスト自転車は、街乗り系、通勤・通学系、スポーツ系に分類され、後者ほど走行距離が長く、容量の大きなバッテリが搭載されている。また、電気自動車と同様の回生充電機構を搭載し、さまざまなセンサーやインタフェースを駆動するものもある。そこで本研究開発では、図1に示すように、自転車に搭載されたバッテリ(蓄電系)を電力源とし、スマートフォンや専用カメラで路面を撮影し(計測系)、スマートフォンや専用演算器で画像処理を実行し(演算系)、現在の3G/LTE網や将来の5G網を介して撮影画像や処理結果をクラウドに集約する社会インフラ観測システムを考える(通信系)。
(2) 道路画像処理の開発
道路画像処理としては、専用機器・専用センサーを用いた高精度のものからスマートフォン等を用いた簡易なものまで種々の方式が提案されているが、本稿では、道路損傷箇所検出、路上廃棄物検出、段差検出、混雑度検出、高精細画像処理などを取り上げる。これらは主に深層学習を活用し、予め準備されたサンプル画像群を用いて学習モデルを構築し、スマートフォン等で撮影した画像に対して道路損傷箇所や路上廃棄物の検出を試みる。研究開発当初は GitHub 上に公開されているソースコード等を活用し、必要に応じて学習データの拡充やコードのカスタマイズを行い、性能改善を試みる。
(3) プロトタイプ試作
計測・演算・通信系はスマートフォンで撮影・圧縮を行い、クラウドに伝送・処理を行う構成と、専用カメラ・専用演算器を用いて自転車側で撮影・処理を行い、クラウドに処理結果を伝送する構成を想定する。これらを電動アシスト自転車にマウントし、バッテリ給電による動作を試み、撮影画像もしくは処理結果をクラウドシステムに蓄積する。最終的な処理結果はWebを通じて利用者にフィードバックを行い、その後のインフラ管理や街作りの効率化に役立てる。
(4) フィールド実験
最終年度は大学周辺でフィールド実験を実施し、提案方式の有効性を実証する。
(5) 中間報告:eBike-project.pdf

図1: システム概要図
- 研究開発成果リスト
[1] 甲藤二郎・竹内 健・金井謙治・孫 鶴鳴: “スマート自転車を活用した道路インフラ観測システム,” 電子情報通信学会総合大会, Mar.2019.
[2] 金井謙治・山本健人・村山知輝・和田直己・竹内健・甲藤二郎: “道路インフラ維持のための電動自転車を活用したモバイルセンシングシステムの開発,” 信学会CS研究会, Sep.2019.
[3] 金井謙治・山本健人・丸山大貴・村山知輝・関根響・白崎智美・前林伸治・甲藤二郎:“モバイルエッジクラウド基盤のためのスマート自転車の研究開発,” 電子情報通信学会ソサイエティ大会, Sep.2019.
[4] Jiro Katto, Masaru Takeuchi, Kenji Kanai and Heming Sun: “Road Infrastructure Monitoring System using E-Bikes and Its Extensions for Smart Community,” SMAS 2019, ACM Mobicom Workshop, Oct.2019.
[5] 村山知輝・金井謙治・竹内健・甲藤二郎: “歩道の混雑度推定に向けた360度画像を利用した人物検出手法の性能評価,” 信学会SeMI研究会、Nov.2019.
[6] 山本健人・金井謙治・甲藤二郎: “電動自転車に搭載した2DLiDARを活用した段差検知の精度評価,” 信学会SeMI研究会、Nov.2019.
[7] 村山知輝,金井謙治,竹内健,甲藤二郎: “360 度映像を利用した道路上の人物密度分布の評価,” PCSJ/IMPS 2019, Nov.2019.
[8] 山本健人・金井謙治・甲藤二郎: “電動アシスト自転車に搭載した2DLiDARによる段差推定手法の検討,” 信学会SeMI研究会, Mar.2020.
[9] 丸山大貴・金井謙治・甲藤二郎: “RGB-D カメラを用いた通路幅推定手法の精度評価,” 信学会SeMI研究会, Mar.2020.
[10] 和田直己・竹内 健・金井謙治・甲藤二郎: “深層学習による道路損傷検出の精度改善手法の一提案,” 信学会IE研究会, Mar.2020.
[11] 丸山大貴・金井謙治・甲藤二郎: “RGB-Dカメラを用いた通路幅推定手法の精度評価,” 電子情報通信学会総合大会、Mar.2020.
[12] 山本健人・金井謙治・甲藤二郎: “電動アシスト自転車に搭載した 2DLiDARによる段差推定手法の検討,” 電子情報通信学会総合大会、Mar.2020.
[13] 村山知輝・一原賢吾・金井謙治・竹内 健・甲藤二郎: “歩行者交通量推定に向けた歩行者流動の可視化,” 電子情報通信学会総合大会、Mar.2020.
[14] 和田直己・竹内 健・金井謙治・甲藤二郎: “深層学習による道路損傷検出手法の一提案とその精度評価,” 電子情報通信学会総合大会、Mar.2020.
[15] Jiro Katto: “Development and Evaluations of Visual IoT Services,” IEEE ICCCI 2020, June 2020.
[16] 甲藤二郎・竹内健・金井謙治・孫鶴鳴・村山知輝・山本健人・和田直己: “スマート自転車とオープンデータを活用した道路インフラ維持システム,” ADVNET 2020, Oct.2020.
[17] Kento Yamamoto, Kenji Kanai and Jiro Katto: “Curb Height Estimation using 2D LiDAR mounted on e-Bike,” IEEE GCCE 2020, Oct.2020.
[18] Kazuki Murayama, Kenji Kanai, Masaru Takeuchi and Jiro Katto: “Deep Pedestrian Distance Estimation from Single-shot Image,” IEEE GCCE 2020, Oct.2020.
[19] Daiki Maruyama, Kenji Kanai and Jiro Katto: “Accuracy Evaluation of Corridor Width Estimation using RGB-D Camera,” IEEE GCCE 2020, Oct.2020.
[20] Naoki Wada, Kenji Kanai, Masaru Takeuchi and Jiro Katto: “Road Crack Detection Using U-Net,” IEEE GCCE 2020, Oct.2020.
[21] 村山知輝・金井謙治・竹内 健・甲藤二郎: “深層学習を用いた単眼画像からの歩行者距離推定,” 信学技報, Nov.2020.
[22] Kazuki Murayama, Kenji Kanai, Masaru Takeuchi, Heming Sun, Jiro Katto: “Deep Pedestrian Density Estimation for Smart City Monitoring,” IEEE ICIP 2021, Sep.2021.